肘が伸びない原因とは?放置すると起こる「肘の拘縮(Stiff Elbow)」を鍼灸師が解説

「肘が最後まで伸びない」 「左右で肘の伸び方が違う」
このような症状に気づいたことはありませんか。
実は肘関節は 完全に伸びなくても日常生活ができてしまう関節です。そのため、異常に気づかないまま徐々に可動域が悪くなっていくケースがあります。
この状態が進行すると Stiff Elbow(肘関節拘縮) と呼ばれる状態になることがあります。
この記事では、実際の症例と研究報告をもとに
肘が伸びなくなる原因
なぜ気づかないのか
どのような治療が必要なのか
を解説します。
次のような症状はありませんか。
肘が最後まで伸びない
左右で肘の伸び方が違う
曲げると肘の内側が突っ張る
深く曲げると痛みがある
腕を伸ばすと違和感がある
このような状態が続いている場合、肘関節の可動域制限が起きている可能性があります。
肘関節は通常
伸展:5° 屈曲:145°
程度の可動域があります。

しかし
伸展制限が30°以上
屈曲が120°未満
になる状態は Stiff Elbow(肘関節拘縮) と定義されます。
この状態になると
顔を洗う
髪を整える
物を持ち上げる
といった動作が徐々に難しくなっていきます。
研究によると、日常生活に必要な肘関節の可動域は
30°〜130°
とされています。
つまり、肘が30°伸びなくても
食事
洗顔
着替え
といった動作は問題なく行えてしまいます。
そのため
肘が伸びていないことに気づかない
ケースが少なくありません。
肘の可動域制限は主に次の原因で起こります。
関節を動かさない状態が続くと、筋肉の中では
血流低下
低酸素状態
筋線維化
といった変化が起こります。
研究では、関節を動かさない状態が続くと 1〜2週間でも筋肉の変化が始まることが報告されています。
この状態が続くと筋肉が硬くなり、関節が動きにくくなります。
肘の痛みがある場合
テニス肘
野球肘
関節炎
などが原因になり、痛みによって関節を動かさなくなることで拘縮が起こることがあります。
関節を長期間動かさないと
筋肉
関節包
靭帯
が硬くなり、可動域制限が進行します。
これを 関節拘縮 といいます。
当院で経験した症例を紹介します。
患者さんは 58歳女性。
職業は客室清掃員で、趣味で週2回バレーボールをしていました。
3年前、バレーボールのレシーブ時に
「左肘が伸びにくい」
と感じたそうです。
しかし
痛みが少ない
日常生活に支障がない
ため、そのままにしていました。
肘の可動域を測定すると
右肘 伸展:0° 屈曲:130°
左肘 伸展:−30° 屈曲:120°未満
左肘は Stiff Elbowの基準を満たしている状態でした。
興味深いことに
靭帯損傷なし
圧痛なし
つまり、外傷が原因ではありませんでした。
肘関節の伸展制限は、体の動きによって補われることがあります。
例えば、肘が伸びない場合でも
肩関節を外旋させることで腕の位置を調整できる
ため、見た目には肘が伸びているように見えることがあります。
このような代償動作があるため
肘が伸びないことに気づきにくい
のです。
この症例では東洋医学的な診察を行うと
舌の左側の腫れ
腹診で左側の反応
などが見られました。
これは簡単に言うと
体の左側の回復力が低下している状態
と考えられます。
その結果
左腕の疲労が回復しにくい
筋肉が硬くなる
という状態が起きていた可能性があります。
治療では
体の回復力を整える目的で
照海
三陰交
合谷
太衝
に鍼治療を行いました。
さらに
広背筋
上腕三頭筋
上腕二頭筋
前腕の筋肉
を丁寧に伸ばしました。
治療直後
伸展 −10° 屈曲 125°
まで改善しました。
しかし1週間後には
元の可動域に戻っていました。
これは患者さん自身が
肘が伸びていないことを日常生活で意識していない
ため、再び肘を曲げた状態で生活してしまうからです。
肘の可動域制限は、早期に対処することが重要です。
もし
肘が最後まで伸びない
左右差がある
肘が突っ張る
と感じる場合は
可動域評価
筋肉の柔軟性改善
適切な治療
を行うことで改善する可能性があります。
肘の可動域制限は
痛みが少ない
日常生活ができる
という理由で見逃されやすい症状です。
しかし放置すると
関節拘縮として固定してしまう可能性があります。
肘の違和感や可動域の左右差がある場合は、早めに評価することが重要です。
